react router v7完全ガイド:新モード選定から移行・運用まで

この記事ではReact Router v7の全体像を、3つのモード(Declarative/Data/Framework)と新しいルーティング設計(Config・Component・File規約)、v6→v7のアップグレード手順、AWS/CloudFrontでの遷移エラーや画像表示不具合など実運用のつまずきと対処までまとめて解説します。

目次

React Router v7とは何か(概要と位置づけ)

react+router+remix

react router v7は、Reactアプリケーションにおける「画面遷移(ルーティング)」の中核を担うルーティングライブラリの最新メジャーバージョンです。単なるURLとコンポーネントの対応付けに留まらず、近年のフロントエンド開発で重視されるデータ取得やフォーム送信、エラー処理といった“画面のライフサイクル”全体を、ルート単位で扱えるように発展してきた流れの延長線上にあります。

位置づけとしては、「Reactの標準機能ではないが、多くのSPA(Single Page Application)やSSR/SSGを含むWebアプリ構成で事実上の定番」として採用されることが多い存在です。v7では、React Routerが担う範囲がより明確になり、用途やチームのアーキテクチャに応じて選べる方向へ整理されている点が重要です。

v7で何が変わったのか(全体像)

react router v7の変更点を一言でまとめると、「現代的なWebアプリに必要な機能群を、ルーティング中心に再整理し、実運用で使いやすい“統一された体験”へ寄せた」という全体像になります。過去のバージョンで追加されてきた概念やAPIが、v7ではより一貫した形で扱えるよう意識されています。

全体像として注目されやすいのは、次のようなポイントです。

  • ルーティングを「画面切り替え」だけでなく、データ取得・送信・エラー境界などアプリ挙動の単位として捉える考え方が強化されている

  • Remix由来のアプローチ(ルート単位でのデータや処理の組み立て)との整合性が高まり、エコシステムの見通しが良くなっている

  • 従来のReact Router利用者が積み上げてきたノウハウを活かしつつ、より“フレームワーク的”な使い方へ接続しやすい構造に寄っている

ここで大切なのは、v7が「別物に置き換わった」というより、React Routerが長年提供してきたルーティングの強みを土台にしながら、実務で必要になりがちな周辺機能をより自然に扱えるように整えたアップデートだという点です。

Remixとの統合とエコシステムの変化

react router v7を理解するうえで避けて通れないのが、Remixとの関係です。React RouterとRemixは別プロダクトとして知られてきましたが、近年は「ルーティングを中心にアプリのデータやUIを組み立てる」という思想面での接近が進み、開発体験や周辺ツールの方向性にも影響を与えています。

この統合の文脈で重要なのは、React Routerが“単体ライブラリ”として完結するだけでなく、より大きな開発体験(テンプレート、CLI、ホスティング前提の運用など)と連動しやすい位置に置かれ始めたことです。結果として、ユーザーは「ライブラリとして軽量に使う」選択肢と、「フレームワーク寄りの一体体験として使う」選択肢の両方を検討しやすくなっています。

React RouterとRemixの経緯

React RouterはReactのルーティングライブラリとして広く使われ、長い期間にわたりSPAの画面遷移を支えてきました。一方Remixは、ルーティングを基点にしながら、サーバーサイドレンダリングやデータ取得、フォーム処理などを含めた“フルスタック寄り”の体験を提供するフレームワークとして登場しました。

この2つは別々に進化してきたものの、実務上は「ルート単位でデータやエラー処理を扱いたい」というニーズが共通しており、Remixで磨かれた考え方がReact Router側にもフィードバックされてきた流れがあります。v7は、その流れを踏まえて両者の距離感が変化し、「React Routerを中心に、Remix系のアプローチへ自然につながる」状態をより明確にした位置づけだと言えます。

v7とShopify(Hydrogen/CLIテンプレート)との関係

Shopifyは、Reactベースでストアフロントを構築するためのフレームワークとしてHydrogenを提供しています。Hydrogenは、開発者がルーティングやデータ取得を含むアプリ骨格を素早く立ち上げられるよう、テンプレートやCLIなどの体験にも力を入れているのが特徴です。

react router v7の文脈では、こうした「フレームワークとしての立ち上げ体験」や「ルーティング中心の設計」がエコシステム全体で重視されている点がポイントになります。具体的な採用形態やテンプレートの内容は時期により変わり得ますが、少なくともv7が目指す方向性は、Hydrogenのように“実プロダクトで必要な機能を素早く組める”世界観と親和性が高い、という理解が有用です。

Remix v3との棲み分け(別系統の方向性)

react router v7とRemix v3は、近い思想を共有しつつも、目的や責務の置き方に違いがあります。React Routerはあくまでルーティングを中心とした基盤であり、利用者が既存のビルドツールやアーキテクチャに合わせて組み込む余地が大きいのが特徴です。

一方でRemix v3は、アプリケーション全体の構成(サーバー実行・データ連携・ルーティング運用)を含めて“フレームワークとしての統合体験”を提供する方向に進みやすく、意思決定の範囲がより広くなります。

つまり棲み分けとしては、次のように整理できます。

  • React Router v7:既存Reactアプリへ柔軟に組み込みたい、ルーティングを軸に必要な機能を選択して構成したいケースに向く

  • Remix v3:アプリ全体をフレームワークの流儀で組み上げ、ルーティング〜データ処理まで一体で最適化したいケースに向く

このように、v7はRemixと“同じものになる”のではなく、近づいた部分と役割分担がはっきりした部分が共存しており、エコシステム全体の選択肢が増えたと捉えるのが実務的です。

React Router v7のモードと選び方

react+router+ssr

React Router v7は、同じ「ルーティング」を扱いながらも、アプリの作り方やデータ取得の責務分担に応じて複数のスタイル(モード)を選べるのが特徴です。どれを選ぶかで、ルート定義の書き味だけでなく、データ取得・エラー処理・SSR(サーバーサイドレンダリング)への向き不向きが変わります。ここでは、宣言的(Declarative)/データ駆動(Data)/フレームワーク(Framework)の3スタイルの特徴と、ライブラリモードとフレームワークモードの判断基準を整理します。

宣言的(Declarative)スタイルの特徴

宣言的(Declarative)スタイルは、React Routerの基本的な使い方としてイメージされやすい「UI(コンポーネント)からルーティングを宣言する」アプローチです。画面遷移はあくまでクライアント側のUI状態の一部として扱い、ルーティング設定もコンポーネント構造に馴染む形で組み立てられます。

  • 理解しやすく導入が軽い:Reactのコンポーネント設計に沿ってルートを宣言でき、まずは画面遷移を成立させたいケースで選びやすいです。

  • 既存Reactアプリに組み込みやすい:アプリ全体のアーキテクチャを大きく変えずに、ルーティングだけ段階的に整備できます。

  • データ取得の設計は別途必要になりやすい:データの読み込み・キャッシュ・エラー処理などを、React Routerの外側(別ライブラリや自前実装)で方針決めすることが多くなります。

React Router v7で「まずはルーティングを整えたい」「データ取得は既存方式のまま進めたい」という場合、宣言的スタイルは最小限の変更でメリットを得やすい選択肢です。

データ駆動(Data)スタイルの特徴

データ駆動(Data)スタイルは、ルート(URL)を「画面」だけでなく「データ取得やミューテーションの単位」として捉えるアプローチです。ルーティング定義の中に、データ取得・送信・エラー境界などの責務を寄せることで、ページ単位の要件をルートに集約しやすくなります。

  • ルート単位で要件を閉じやすい:そのページに必要なデータ、失敗時の扱い、遷移時の状態などを「ルートの設定」として揃えられます。

  • 画面遷移とデータ取得を一体で設計しやすい:URLが変わったら何を取りに行くか、どのタイミングでエラーを出すか、といった流れを整理しやすくなります。

  • 学習コストが上がりやすい:単にコンポーネントを切り替えるだけでなく、ルート定義を「アプリの制御点」として扱うため、設計観点が増えます。

React Router v7を「ルーティングライブラリ」以上のものとして活用し、ページ単位の整合性(取得・送信・エラー)を高めたい場合に、データ駆動スタイルが効果を発揮します。

フレームワーク(Framework)スタイルの特徴

フレームワーク(Framework)スタイルは、ルーティングを中心に据えつつ、ビルドや実行環境(開発サーバー、SSR、最適化の仕組み等)まで含めて、より「アプリの土台」として統合された運用を目指す考え方です。ルート定義・データ処理だけでなく、実行形態まで含めた一貫性が得やすくなります。

  • アプリの標準形を揃えやすい:開発・本番の動かし方、ルートの責務分担などが一定の流儀で揃い、チーム開発でのブレを抑えやすくなります。

  • SSRや配信形態を含む全体最適に向きやすい:ルーティングと実行環境の接続が前提化され、構成の一体感が出ます。

  • 自由度より規約を優先しやすい:既存の構成や周辺ツールの選択を「合わせる」場面が増え、部分最適より全体の一貫性を重視する設計になりがちです。

React Router v7を中心に「アプリの作り方そのもの」を標準化したい、あるいはルーティング周辺の決め事を増やしてでも運用コストを下げたい場合に、フレームワークスタイルが選択肢になります。

ライブラリモードとフレームワークモードの判断基準

React Router v7の採用検討では、「ライブラリとして使うか」「フレームワークとして使うか」を先に決めると、設計の迷いが減ります。ここでは実務で判断しやすい観点をまとめます。

  • 既存資産の大きさ

    既存のデータ取得層・状態管理・ビルド基盤が強く確立しているなら、まずはライブラリモードでReact Router v7を「ルーティングの範囲」に留める方が衝突が少なくなります。逆に新規開発や刷新で土台から揃えるなら、フレームワークモードで規約込みの統一を狙いやすいです。

  • チームの運用方針(自由度 vs. 統一)

    小規模チームや試行錯誤が多いフェーズでは、選択肢を残しやすいライブラリモードが扱いやすい一方、人数が増えて「設計のバラつき」が課題なら、フレームワークモードで作法を揃えるメリットが出ます。

  • ルートにデータ責務を寄せたいか

    画面とデータ取得を密結合に設計し、ルート単位で整合性を取りたいなら、ライブラリ的な使い方でもデータ駆動(Data)スタイル寄りの設計が向きます。逆に「データは別レイヤーで管理する」方針なら、宣言的スタイルで十分な場合があります。

  • 将来の拡張で“規約”が必要になるか

    プロジェクトが成長したときに、ルーティングだけでなく、実行環境やディレクトリ構成・運用ルールまで「揃っていること」が効いてくる見込みがあるなら、早めにフレームワークモードを検討する価値があります。逆に要件が流動的なら、最初から規約を重くしすぎない判断も合理的です。

まとめると、React Router v7は「宣言的に軽く始める」ことも「データ駆動でページ品質を揃える」ことも、「フレームワークとして全体を統一する」ことも可能です。自分たちの課題が“ルーティング”だけなのか、“アプリ運用の標準化”まで含むのかを基準にモードを選ぶと、導入後の手戻りを減らせます。

ルーティングの設計と設定方法(Configuring Routesの要点)

react+router+routing

react router v7では、ルーティングを「どの単位で分割し、どこで共通UIを維持し、どの粒度でデータやエラーを扱うか」を先に設計しておくと、運用フェーズでの拡張が格段に楽になります。このセクションでは、Configuring Routesの考え方に沿って、ルート定義の基本から、ネスト、動的セグメント、コンポーネント/ファイルベースの整理、そして併用戦略までを要点中心に整理します。

ルート定義の基本パターン

react router v7のルート定義は、画面のURL構造を「階層(ネスト)」として捉えるのが基本です。まずはアプリ全体の外枠(レイアウト)を定義し、その内側にページをぶら下げる形にすると、共通UIの維持とページ追加が両立しやすくなります。

  • トップレベル:アプリ全体の土台(レイアウト、グローバルなエラーハンドリングなど)
  • セクション単位:/dashboard など領域ごとの共通UI(サイドバー等)
  • ページ単位:/dashboard/settings など末端の画面

ルート設定の最小例(考え方)

最小構成では、「ルート配列(またはルートツリー)=URLの設計図」と捉え、静的パスを並べるところから始めます。ここでは“どう考えるか”に焦点を当て、まずは①トップ、②一覧、③詳細のような基本画面をパスで表現し、次に共通UIが必要な範囲を見極めてネストします。

// 例:考え方の最小イメージ(擬似コード)
const routes = [
  { path: "/", element: <RootLayout />, children: [
    { index: true, element: <Home /> },
    { path: "items", element: <ItemList /> },
    { path: "items/:id", element: <ItemDetail /> },
  ]},
];

ポイントは、childrenでネストさせると「親の枠(共通UI)を維持したまま子が差し替わる」設計に自然に寄せられることです。後からページが増えても、同じレイアウト配下にぶら下げるだけで整合が取りやすくなります。

ルートモジュールの役割と責務

react router v7では、ルート(ページ)を“ただのコンポーネント”として扱うのではなく、画面表示に必要な要素をまとまりとして管理する発想が重要です。ルートモジュールに責務を寄せると、画面追加・改修時の影響範囲を局所化しやすくなります。

  • ルートのUI(画面コンポーネント)
  • そのルートに紐づくパラメータ解釈(例:idの扱い)
  • 同一領域で共有する構造(レイアウト配下での責務分割)

責務の境界を決めるコツは、「URLが変わる単位=ルート」「URLは同じで状態だけ変わる単位=コンポーネント内部」と切り分けることです。これにより、ルーティングが肥大化しにくく、逆にコンポーネントがURL都合で複雑化するのも防げます。

ルートの種類と使い分け

ルーティング設計では、「同じ“ルート”でも役割が違う」ことを理解して使い分けると、構造が崩れにくくなります。代表的には、ページとしてのルート、子を束ねるためのルート、共通UIを提供するルートなどに分かれます。

  • インデックス(既定)に相当するルート:親パス直下の“最初の画面”を表す
  • 通常のパスルート:URLに対応するページを表す
  • レイアウト用途のルート:共通UIを提供し、子ルートの表示枠になる

ネストされたルートの設計ポイント

ネストは便利ですが、深くしすぎるとメンテナンス性が落ちます。設計ポイントは「URL階層とUI階層を無理に一致させない」ことです。URLとしては階層でも、UIはフラットに近い場合があります。

  • ネストは「共通UIを持つ範囲」に限定する(ヘッダー/サイドバーなど)
  • 詳細画面のさらに下位(例:/items/:id/logs)は“機能のまとまり”単位で切る
  • 過度な分岐は、ルートを増やすより「内部コンポーネント + 条件表示」で解決した方がよい場合がある

結果として、ネストは“UIの枠”を中心に設計すると破綻しにくく、react router v7のルートツリーも読みやすく保てます。

レイアウトルートで共通UIを維持する方法

共通UI(例:ヘッダー、ナビゲーション、フッター)を保ちながら画面を切り替えるには、レイアウトルートを起点に子ルートを配置します。レイアウト側は「枠だけを担当し、子の表示領域を用意する」ことが基本です。

  • アプリ全体のレイアウト:認証後の共通UIや全ページ共通の枠
  • セクションのレイアウト:管理画面領域だけサイドバーを出す、など
  • 一部ページのみのレイアウト:特定フロー(例:設定)だけ共通部品を持つ

この方式にしておくと、共通UIの変更が“レイアウトルートだけ”に閉じ、子ページ側の修正を最小化できます。

動的セグメントとURLパラメータの扱い

react router v7で頻出するのが、/items/:idのような動的セグメントです。設計上は「何をURLで識別し、何をクエリや状態に逃がすか」を決めることが重要になります。

  • 動的セグメント(:idなど):リソースを一意に特定する用途に向く(詳細、編集)
  • クエリパラメータ:並び替え、フィルタ、ページングなど“表示条件”に向く
  • 状態(ストア等):一時的で共有不要、URLに残す必要がないUI状態に向く

URLパラメータを扱う際は、型や形式(数値かUUIDか等)を早めに決め、ルートモジュール側で解釈・検証する方針にしておくと、想定外入力への耐性が上がります。結果として、ページ単位の責務が明確になり、ルーティングの意図も読み取りやすくなります。

コンポーネントベースのルーティング整理

コンポーネントベースでルーティングを組む場合は、ルート定義(ルートツリー)と画面コンポーネントの関係が複雑化しやすい点に注意が必要です。整理の基本は、「ルートに登場するコンポーネント(ページ)と、ページの中で再利用するコンポーネント(部品)を分ける」ことです。

  • ルート用コンポーネント:ページ単位(例:ItemListPage, ItemDetailPage)
  • 共有コンポーネント:カード、テーブル、フォームなど
  • レイアウトコンポーネント:ヘッダー、サイドバーなどの枠

この分離を徹底すると、react router v7のルート定義は“ページ名”中心で読みやすくなり、UI部品の再利用も進みます。逆に、部品がルート層に混ざると、ルートツリーが肥大化して保守コストが上がりがちです。

ファイルベースルーティング(File Route Conventions)の運用

ファイルベースルーティングは、「URL設計をファイル構成に落とし込む」運用です。チーム開発では特に、追加すべき場所が明確になるため、ページ追加の手順が揃い、レビューもしやすくなります。一方で、命名規則とディレクトリ設計が曖昧だと、URLとファイルの対応が崩れて迷子になりやすいので、最初に“規約”を固めるのが重要です。

推奨ディレクトリ/ファイル構成

推奨の考え方は、「routes(ルート)と components(部品)を混ぜない」「レイアウトとページの粒度を揃える」の2点です。たとえば以下のように、ルーティングに関わるものを専用領域へ寄せます。

src/
  routes/          // ルート(ページ)を集約
    _layout/       // 共有レイアウト(規約として分ける例)
    items/         // 領域ごとのまとまり
  components/      // 再利用コンポーネント
  features/        // ドメイン単位のロジック(必要に応じて)

ここで大切なのは、ディレクトリ名そのものよりも「何をroutesに置くか」を固定することです。ページ(ルート)をroutesに限定すると、ルート追加時の作業導線が一定になります。

URLとファイルのマッピング規則

ファイルベース運用では、URLとファイルの対応関係が“暗黙知”にならないよう、命名規則を文章化しておくのが効果的です。具体的には、静的パス、動的セグメント、インデックス相当の扱いをチームで統一します。

  • 静的パス:/itemsroutes/items 配下のページファイル
  • 動的セグメント:/items/:id[id] のように“パラメータである”ことが分かる命名(プロジェクト規約に合わせる)
  • インデックス:/items直下の既定画面を表すファイル名(例:index相当)を固定

規則を揃えると、URLから実装ファイルを逆引きでき、調査・改修の時間が減ります。react router v7のルート構造が大きくなったときほど、この効果が効いてきます。

設定ベースとファイルベースの併用戦略

実務では、すべてをファイルベースに統一できないケースもあります。たとえば、実験的なルート、権限や環境で出し分けるルート、生成的に構築したいルートなどは、設定ベースの方が扱いやすいことがあります。そこで有効なのが「基本はファイルベース、例外は設定ベース」という併用戦略です。

  • 基本ルート:ファイルベース(ページ追加・発見性を優先)
  • 例外ルート:設定ベース(条件分岐、限定公開、段階的リリースなど)
  • 共通レイアウト:どちらの方式でも“レイアウトルート”として一貫して扱う

併用の際は、ルートの“正”がどちらかを曖昧にしないことが重要です。規約として「通常のページはroutes配下に必ず置く」「設定ベースは例外用途のみ」と線引きすると、react router v7のルーティングが拡張されても、構造の一貫性を保ちやすくなります。

React Router v7での画面遷移とレイアウト実装

react+router+outlet

パスの完全一致・部分一致の考え方

React Router v7で画面遷移を設計するうえで、まず押さえたいのが「どのURLが、どのルートにマッチするか」という一致(マッチ)の考え方です。特に、親子(ネスト)構造のルーティングを採用すると、あるパスが“完全一致”なのか、“部分一致(プレフィックス一致)”なのかで、表示される画面やレイアウトが変わります。

基本として、ルートのマッチには次の2つの観点があります。

  • 完全一致(end match):URL全体がそのルートのパスと一致したときにマッチする
  • 部分一致(prefix match):URLの先頭部分が一致していればマッチし、残りは子ルートで解決する

React Router v7では、ネストされたルートを前提に「親が部分一致し、子が残りを担当する」設計が自然です。たとえば /dashboard を親ルートにし、/dashboard/settings を子ルートにする場合、親は /dashboard までマッチしてレイアウト等を描画し、残りの /settings を子ルートが描画する、という分担になります。

一方で、ナビゲーションUI(メニューのアクティブ表示等)では「完全一致させたい場面」と「部分一致させたい場面」が混在しがちです。代表例が NavLink のアクティブ判定です。

  • 完全一致させたい例:トップページリンク(/)が、他の全ページでもアクティブになってしまうのを避けたい
  • 部分一致させたい例/dashboard 配下のどのページでも「ダッシュボード」メニューをアクティブにしたい

そのため、React Router v7での画面遷移を“意図どおり”に見せるには、ルートのネスト構造と合わせて、アクティブ判定やリンク先の設計を揃えることが重要です。特に、親ルートをレイアウト用途に使う場合は、親が「部分一致で生き続ける」前提でUIを設計すると、遷移時のチラつきや想定外の非表示を減らせます。

// 例:NavLinkのアクティブ判定(概念)
// 「/」は完全一致させたい、
// 「/dashboard」は配下も含めてアクティブにしたい、などの使い分けを行う

Outletを用いた共通レイアウトの実装

React Router v7で共通レイアウト(ヘッダー、サイドバー、フッターなど)を維持したまま画面遷移する場合、中心となるのが Outlet です。Outlet は「子ルートの描画位置」を表し、親ルート側で共通UIを固定しつつ、メインコンテンツだけを差し替える構造を作れます。

実装イメージとしては、親ルートにレイアウトコンポーネントを割り当て、レイアウト内に Outlet を配置します。これにより、/app 配下の各ページ(例:/app/app/projects/app/settings)へ遷移しても、共通レイアウトは維持され、Outlet の箇所だけが子ルートに応じて切り替わります。

import { Outlet } from "react-router";

export function AppLayout() {
  return (
    <div className="layout">
      <header>共通ヘッダー</header>
      <div className="content">
        <aside>共通サイドバー</aside>
        <main>
          {/* 子ルートがここに描画される */}
          <Outlet />
        </main>
      </div>
      <footer>共通フッター</footer>
    </div>
  );
}

Outlet を使うメリットは、単に「共通UIを毎回書かなくてよい」だけではありません。画面遷移(React Router v7のナビゲーション)が起きても、レイアウト自体が入れ替わらないため、次のような運用上の利点があります。

  • 体験の一貫性:ヘッダーやナビゲーションが固定され、遷移時の視線移動が少ない
  • 責務分離:レイアウトは親、ページ固有の表示は子、と役割が明確になる
  • 変更に強い:サイドバー構成やヘッダー文言などを親だけ直せば配下すべてに反映できる

また、レイアウトを多段にしたい場合(例:全体レイアウト → 管理画面レイアウト → 設定画面レイアウト)も、各階層で Outlet を置くことで自然に実現できます。つまりReact Router v7におけるレイアウト設計は、ネストされたルートと Outlet をセットで捉えるのが基本です。

v6からv7へのアップグレード手順と移行戦略

react+router+migration

react router v7への移行は、「一気に置き換える」よりも、影響範囲を切り分けて段階的に進めるほうが安全です。特にv6は採用形態(従来の宣言的ルーティング中心か、データルーター中心か)で移行の勘所が変わります。本章では、移行前の互換性確認から、v6系の更新順、v7移行時に起きやすい修正ポイント、最後の動作確認までを実務目線で整理します。

移行前に押さえる互換性チェック項目

移行作業に入る前に、「どこが壊れうるか」を先に可視化しておくと、手戻りが大きく減ります。react router v7ではパッケージの使い分けやAPIの変更により、ビルド設定・SSR・データ取得の実装などが影響を受けやすいため、まずは棚卸しから始めます。

  • 現在の利用形態の特定:v6で<Routes>/<Route>createBrowserRouterなどのデータルーター中心なのかを整理します。混在している場合は、どの画面がどちらで動いているかまで分解します。

  • 依存パッケージの整合性react-routerreact-router-domのバージョンが揃っているか、ロックファイル込みで確認します。周辺の型定義(TypeScript)やLint/Formatの設定も、更新でエラーが顕在化しやすいポイントです。

  • SSR/プリレンダリング有無:Node環境での実行(SSR)や静的書き出しをしている場合、エントリポイントやルート解決の流れが影響を受ける可能性があります。現状の起動方式(フレームワーク利用、独自SSR、ホスティング形態)を明確にします。

  • データ取得・遷移の実装箇所:loader/action、fetcher、deferなどの利用有無と利用箇所を洗い出します。フォーム送信やリダイレクト、エラー境界(errorElement/エラーハンドリング)が絡む箇所は、特に回帰が出やすいです。

  • ルート定義の規模と分割単位:ルート数が多いほど、移行は「単位を切って」進める必要があります。ページ群(機能)ごとにルートファイルを分けられているか、共通レイアウトやガードの実装場所がどこかを確認します。

この時点で「影響範囲のマップ(画面×機能×ルーティング方式)」を作っておくと、移行後のテスト観点の漏れが減り、作業が計画的になります。

v6系(特定バージョン)から段階的に更新する進め方

react router v7へ直行する前に、v6系の最新帯へ寄せてから移行するほうが、破壊的変更の吸収が容易です。とくにデータルーター周りはv6の後半で成熟したため、古いv6からだと差分が大きくなりがちです。

  1. Step 1:まずはv6の最新版へ更新(差分を小さくする)
    いきなりv7へ上げるのではなく、現在のv6を最新(または推奨)へ寄せ、警告・非推奨・型エラーを先に潰します。これにより、v7移行時の「原因不明の崩れ」を減らせます。

  2. Step 2:ルーティング方式を統一する
    宣言的ルーティング(<Routes>)とデータルーター(createBrowserRouter)が混ざっている場合、移行単位が曖昧になりやすいです。機能単位でどちらかに寄せ、混在を減らします。

  3. Step 3:ルート定義の境界を「機能ごと」に分割する
    ルート定義が1ファイルに巨大化していると、v7移行の差分が読みづらくなります。ルート配下(例:管理画面、マイページ、公開ページなど)で分割し、変更範囲を局所化します。

  4. Step 4:v7へ更新し、影響の大きい箇所から順に修正する
    パッケージ更新→型エラー解消→起動確認→主要導線の動作確認、の順で進めます。CIがあるなら、更新直後からテストを回し、回帰を早期に検知できる状態を保ちます。

段階的更新の狙いは、変更点を「小さな差分の積み上げ」にして、原因追跡を容易にすることです。特にチーム開発では、PRを小さく分けることが移行期間の品質を左右します。

v7移行時の変更点と修正の勘所

react router v7では、APIや型、パッケージ境界の変更により「コンパイルは通るが挙動が違う」または「型が通らず作業が止まる」といったポイントが出ます。ここでは移行時に遭遇しやすい修正の勘所を、実装観点で整理します。

  • パッケージのインポート先の見直し
    react-routerreact-router-domのどちらから何をimportするかは、バージョン更新でズレが出やすい部分です。移行では、IDEの自動import任せにせず、プロジェクト内でimport規約を統一して差分を小さくします。

  • データ取得(loader/action)周辺の型・戻り値の整合
    loader/actionの返却値、useLoaderDataの型推論、リダイレクトやエラーの扱いなどは、細かな仕様変更が影響しやすい領域です。修正は「型を通す」だけでなく、ネットワーク失敗時や未認証時など例外系の導線も含めて再点検します。

  • エラー境界(errorElement等)と例外の伝播
    ルート単位のエラー表示に依存している場合、どの例外がどの境界で捕捉されるかが重要です。v7移行時は「意図した境界でエラーが表示されるか」を重点的に確認し、必要なら境界の配置を調整します。

  • ナビゲーション・相対パスの解釈差
    Linknavigateの相対指定、ネスト構造での解釈は、ルート構成に依存して差が出やすいです。見た目のリンク先が同じでも、ネスト変更で意図しないURLになることがあるため、主要リンクの到達先を洗い直します。

  • 型エラーは「原因の根」に戻って直す
    v7移行時は型の厳格化や型推論の変化でエラーが増える場合があります。場当たり的にanyで潰すと、後でデータ不整合やランタイムエラーに繋がるため、loader/actionの返却型、コンポーネント側の期待値を揃える方針で直します。

注意:移行時に「警告は出るが動いている」状態を放置すると、次の更新で破断するリスクが高まります。警告や非推奨APIが出た場合は、移行PR内で可能な範囲で解消しておくのが安全です。

移行後の動作確認(ルーティング/データ取得/ビルド)

react router v7への更新後は、単体の画面表示だけでなく、「遷移」「データ取得」「ビルド成果物」の3点セットで確認するのが重要です。ルーティングは開発環境では動いても、本番ビルドや配信環境で初めて問題が露呈することがあるためです。

  • ルーティング確認
    主要導線(トップ→一覧→詳細→戻る等)を実際にクリックで遷移し、以下を確認します。

    • ネストされたルートでレイアウトが崩れないか(想定したOutlet配下に描画されるか)

    • 動的セグメント(例:/users/:id)で正しい画面が出るか

    • 存在しないURL(404想定)での挙動が意図通りか

    • 戻る/進む(ブラウザ履歴)で状態やURLが破綻しないか

  • データ取得確認
    loader/actionを使っている場合は、正常系だけでなく失敗系も確認します。

    • 初回表示でデータが取得できるか(SSR/CSRどちらでも)

    • パラメータ変更(URL変更)で再取得が期待通り発生するか

    • フォーム送信・更新処理が正しく反映され、二重送信などが起きないか

    • 認証エラー・権限不足・ネットワークエラー時の表示が適切か

  • ビルド確認
    開発サーバーで動いても、プロダクションビルドで差が出ることがあります。最低限、以下を実施します。

    • 本番ビルドが通ること(型チェック含む)

    • ビルド成果物を静的サーバー等で配信し、直URLアクセス(リロード)でもルート解決できること

    • ソースマップやチャンク分割が原因のランタイムエラーが出ていないこと

最後に、移行直後は「見えている画面」より「見えない導線(直URLアクセス、エラー時、更新系)」で問題が起きやすい傾向があります。ルーティング/データ取得/ビルドをセットで確認し、react router v7への移行を安定稼働へ繋げましょう。

実運用でのつまずきポイントと対策(AWS/CDN配信など)

典型的なトラブルの全体像

React Router v7を本番運用(AWS+CDN配信など)に載せると、開発環境では見えなかった「配信・パス設計・キャッシュ」に起因するトラブルが表面化しがちです。特に多いのは、(1) CDN配下でのクライアントサイド遷移時のエラー、(2) 画像やCSS/JSなど静的アセットが参照できない問題です。

これらはReact Router v7そのものの不具合というより、URLの解決方法(SPAのルーティング)と、CDN/オリジンの配信設定(どのパスをどのオブジェクトにフォールバックさせるか)や、ビルド成果物が想定するベースパスの不整合が原因になりやすいのが特徴です。まずは「どのURLで何が返ってきているか(HTMLなのか、404なのか、別のファイルなのか)」を切り分けるのが最短ルートになります。

CDN配下で画面遷移時にエラーになる問題

発生する症状

CDN(例:CloudFrontなど)配下でReact Router v7を使うSPAを配信していると、以下のような症状が典型的です。

  • トップページは表示できるが、/users/settings/profile などの深いURLへ直接アクセス(リロード含む)すると404になる
  • アプリ内の画面遷移は動くが、特定の遷移後に白画面になり、コンソールにルート解決エラーや読み込み失敗が出る
  • CDNのエラーページやオリジンの404レスポンスがそのまま表示される

要するに「ブラウザが直接叩くURL」と「CDN/オリジンが返すべきコンテンツ」の対応がズレている状態です。

起きる原因の整理

React Router v7の典型構成(History APIベースのルーティング)では、/users のようなパスは本来“サーバー上の実ファイル”ではなく、index.html を返した上でアプリがクライアント側でルーティングして画面を出します。

しかしCDN配信では、次のような状況が起こりやすくなります。

  • オリジン(S3静的ホスティング等)が「実在しないパス」を404として返す:SPAの前提(未知パスはindex.htmlにフォールバック)と噛み合わない
  • CDNのキャッシュが404を保持する:一度404がキャッシュされると、設定変更後も誤った応答が続く
  • CDNのエラーレスポンス変換(カスタムエラーページ)が未設定:404時にindex.htmlへ戻すべきところが戻らない
  • アプリの配信パス(サブディレクトリ配信)とルーティングのベースが不一致/app/配下に置いたのに、/基準で遷移してしまい不正なURLを叩く

解決アプローチ(設定・配信の観点)

対策は「SPAとしてのフォールバック」と「キャッシュの整合性」を確保するのが要点です。React Router v7をCDN配下で安定稼働させるには、配信側で“アプリのルート以外のリクエスト”を適切にindex.htmlへ寄せる設計にします。

  • SPAフォールバックを有効化する
    • 深いURL(例:/users)に対しても、オリジンがindex.htmlを返す(またはCDNが404をindex.htmlに変換して返す)ようにする
    • 返すステータスコードは運用方針で変わりますが、少なくとも「コンテンツはindex.html」になる状態を作るのが重要です
  • 「アセット」と「アプリルート」を分けて考える
    • /assets/*/*.js /*.css など静的ファイルはフォールバック対象にせず、存在しないなら正しく404にする
    • それ以外(画面URL)はindex.htmlへフォールバックする
  • CDNキャッシュの影響を排除する
    • 設定変更後に404や古いindex.htmlが残っていないかを確認し、必要に応じて無効化(invalidation)を行う
    • index.htmlは更新頻度が高い一方で、アセットはハッシュ付きで長期キャッシュが基本、というようにキャッシュ方針を分ける
  • サブパス配信時は「期待するURLの起点」を統一する
    • https://example.com/app/配下で配る場合、CDNのオリジンパス・ビルド成果物の参照パス・アプリが生成するリンクの起点が揃っている必要がある
    • ここがズレると、遷移先URLがCDNの想定外になりエラー化します

実務では、まず「深いURLを直叩きしたとき、CDNが何を返しているか」を確認し、index.htmlが返らないならフォールバック(404→index)を整備する、という順番が最も再現性が高い対処になります。

画像など静的アセットが表示されない問題

発生する症状

React Router v7のアプリ自体は表示されるのに、画像やフォント、CSS、追加で分割されたJSチャンクが取得できず、見た目が崩れたり機能が動かなかったりするケースがあります。代表的には次のような形で気づきます。

  • 画像がすべて欠けて、404 (Not Found) がネットワークタブに並ぶ
  • CSSが当たらずレイアウトが崩れる、またはフォントが読み込めない
  • 画面遷移時に追加チャンクのロードに失敗し、エラーで止まる(動的importの取得失敗など)

起きる原因の整理

静的アセット問題の多くは「アプリが生成したアセットURL」と「実際の配信先パス」が一致していないことが原因です。特にサブディレクトリ配信(例:/app/)やCDNのオリジンパス指定が絡むと、次のズレが起こりやすくなります。

  • ビルド時のベースURL(base/publicPath)設定が誤っている:成果物が /assets/... を指しているのに、実際は /app/assets/... に置かれている
  • HTML内の相対パスが意図しない解決になる/users を開いたときに相対参照が /users/assets/... のように解決されてしまう
  • CDNのビヘイビア/ルーティングでアセットまでフォールバックされている:存在しないアセット要求に対しindex.htmlが返り、結果として「JSのはずがHTML」になって実行時エラーになる

解決手順

対策は「正しいアセットURLを生成する」か「そのURLに実際のファイルを置く(配信する)」のどちらかに集約されます。切り分けと修正を確実にするため、次の順で確認するのが有効です。

  1. ブラウザの開発者ツールで失敗しているアセットURLを特定し、どのパスを取りに行っているかを一覧化する
  2. CDN/オリジン側で、そのURLが本当に存在するか(オブジェクトキーや配置ディレクトリ)を照合する
  3. サブパス配信の有無(例:/app/配下)と、ビルド設定のbaseが一致しているか確認する
  4. アセット配信はフォールバック対象外になっているか(誤ってindex.htmlが返っていないか)を確認する

この手順で「アプリが指しているURLが間違い」なのか「配信側の配置が間違い」なのかが明確になります。

ビルドツール側のbase設定を見直す

サブディレクトリ配信をする場合は、ビルドツールが生成するアセット参照の起点(base)を揃えるのが基本です。React Router v7の運用でよくある失敗は、CDNの配信URLは /app/ なのに、ビルドが /assets/... を前提にしてしまうケースです。

例えばViteを使っている場合は、base を環境に合わせて調整します。

// vite.config.ts(例)
import { defineConfig } from "vite";

export default defineConfig({
  // 例: https://example.com/app/ 配下で配信するなら "/app/"
  base: "/app/",
});

この設定により、生成されるindex.htmlやJSチャンクが参照するアセットURLの起点が揃い、CDN配下でも取得できる確率が大きく上がります。反対に、ルート配信(/)に戻すならbase: "/"相当に統一します。

アセットパスの指定を調整する

ビルドツールのbaseを正しても、アプリ内で手書きしているパス指定が残っていると再発します。静的アセットの参照は「どのURLを基準に解決されるか」を意識して、環境差分(ローカルは/、本番は/app/など)に耐える形へ寄せます。

  • 絶対パス/相対パスの混在を避ける:相対指定は表示中URLに依存して崩れやすい
  • CDN配下の配置と一致するパスを使う/app/assets/... に置くなら、参照もそこに揃える(もしくはbase設定で自動生成に寄せる)
  • アセット要求がindex.htmlにフォールバックされていないかを確認する:JS/CSS取得でHTMLが返ると実行時に致命的なエラーになりやすい

React Router v7のルーティング自体が正しくても、アセットのURL解決が崩れると「遷移した瞬間に壊れる」「特定ページだけ表示が崩れる」などの形で運用品質に直結します。アセットの参照パスは“配信パス(CDN設定)とビルド成果物の前提”を常にセットで点検するのが安全です。

React Router v7の導入手順(最短で動かす)

react+router+typescript

React Router v7を「とにかく最短で動かしたい」場合は、まずはクライアントサイド(SPA)として導入し、必要に応じてデータ取得やSSR寄りの構成に拡張していくのが安全です。ここでは、新規の最小構成から既存プロジェクトへの組み込み、そして開発・本番ビルドでの落とし穴までを、手順として整理します。

インストールと最小構成の作り方

React Router v7の最小構成は、「ルーターを作る → ルート定義を渡す → 画面側で描画する」の3点に集約されます。まずはルーティングが動く状態を作り、後からルートの分割やデータ取得の追加を行うと、導入時のトラブルが減ります。

パッケージはnpm / pnpm / yarnのいずれでも導入できます(ここではnpm例)。

npm i react-router

次に、エントリ(例:main.tsx / main.jsx)でルーターを初期化します。最短構成では、createBrowserRouterRouterProvider を使う形が分かりやすいです。

import * as React from "react";
import { createRoot } from "react-dom/client";
import { createBrowserRouter, RouterProvider } from "react-router";

function Home() {
  return <h1>Home</h1>;
}

function About() {
  return <h1>About</h1>;
}

const router = createBrowserRouter([
  { path: "/", element: <Home /> },
  { path: "/about", element: <About /> },
]);

createRoot(document.getElementById("root")!).render(
  <React.StrictMode>
    <RouterProvider router={router} />
  </React.StrictMode>
);

動作確認の観点では、以下が満たせていれば「React Router v7が動いた」と判断できます。

  • / にアクセスするとHomeが表示される
  • /about にアクセスするとAboutが表示される
  • ブラウザの戻る/進むで表示が追従する

なお、リンク遷移も最小で確認したい場合は、ルート内で Link を使ってページ遷移できるかを見ておくと確実です。

import { Link } from "react-router";

function Home() {
  return (
    <div>
      <h1>Home</h1>
      <Link to="/about">Aboutへ</Link>
    </div>
  );
}

既存プロジェクトへの組み込み手順

既存のReactアプリにReact Router v7を組み込む場合は、「既存の描画起点(root)にルーターを差し込む」ことが主作業になります。すでに画面が1枚で動いている構成を壊さず、段階的にルーティングへ移すのがポイントです。

  1. 依存関係を追加する

    npm i react-router
  2. 既存のAppを“最初のルート”として包む

    例えば、元々 <App /> を直接renderしていたなら、まずはそれを path: "/" の要素に移します。これで「今までの画面=ルーティングの起点」にできます。

    import { createBrowserRouter, RouterProvider } from "react-router";
    import App from "./App";
    
    const router = createBrowserRouter([
      { path: "/", element: <App /> },
    ]);
    
    // render側は <RouterProvider router={router} /> に差し替え
  3. ページを増やすときだけルートを追加する

    いきなり全画面を分割せず、「新しく増やすページ」や「URLを持たせたい画面」からルートを増やすと移行が滑らかです。

    const router = createBrowserRouter([
      { path: "/", element: <App /> },
      { path: "/settings", element: <Settings /> },
    ]);
  4. 既存のaタグ遷移を段階的に置き換える

    SPAとしての遷移を維持するには、内部遷移は <a href> ではなく <Link to> へ寄せていきます(外部リンクはaのままで問題ありません)。

組み込みでよくある詰まりどころは、「URLを叩くと開けるのに、画面内リンクで遷移しない」またはその逆です。まずは RouterProvider がエントリの最上位に置かれているか、そして内部リンクが Link に置き換わっているかを確認すると解決が早いです。

開発・本番ビルド時の注意点

React Router v7を導入した直後に起きやすい問題は、コードというより配信設定やビルド成果物の扱いに起因します。開発環境で動いても本番で404になる、直リンクだけ失敗する、といった症状はここで潰しておくと安全です。

  • SPAの直リンク(リロード)で404になる

    React Router v7のブラウザルーティングは、URLの解釈をクライアント側で行います。そのため本番環境では、/about のようなパスへの直アクセス時に、サーバー(または静的ホスティング)が「同名のファイルが無い」と判断すると404になります。対策として、配信側で未知のパスを常にindex.htmlへフォールバックさせる設定が必要です。

  • ベースパス配下に配置する場合のパスずれ

    例として https://example.com/app/ 配下に置く場合、アセットパスやルーティングの前提がズレると、JS/CSSが読み込めない・遷移先が崩れるといった問題が起きます。ビルドツール側の設定(例:base URL)と、ルーター側のベースパス指定が必要になるケースがあります。

  • ビルド成果物のキャッシュで古いルート定義が残る

    本番で「更新したはずのルートが反映されない」場合、CDNやブラウザキャッシュにより古いJSが残っていることがあります。リリース手順として、ハッシュ付きファイル名の利用やキャッシュ制御(どのファイルをどれくらいキャッシュするか)の整理が重要です。

  • 開発時のStrictModeによる“2回実行”の見え方

    React開発時の React.StrictMode 下では、一部の処理が開発環境で複数回走ったように見えることがあります。React Router v7自体の不具合と誤認しやすいため、挙動の切り分けとして「開発時のみの現象か」「本番ビルドでも再現するか」を確認すると判断がぶれません。

最短で導入するコツは、まず開発環境で「ルートの追加・遷移」が成立する状態を作り、その後に本番環境で「直リンク時のフォールバック」「ベースパス」「キャッシュ」まで含めて確認することです。ここまで押さえると、React Router v7の導入は実運用に耐える形でスムーズに進みます。

まとめ(v7の要点と次に読むべきポイント)

react+router+migration

react router v7を導入・移行する際は、「何ができるようになったか」だけでなく、「自分たちの規模と運用に合う組み立て方」と「学習・移行の進め方」をセットで押さえることが重要です。このセクションでは、v7を使い切るための要点を、目的別アーキテクチャとチェックリストとして整理します。

目的別の推奨アーキテクチャ(小規模/中規模/大規模)

react router v7は、アプリの規模やチーム体制によって「ルートの持ち方」「責務分割」「規約の強さ」を変えると、開発体験と保守性が大きく安定します。ここでは“機能の多寡”ではなく、“運用上の失敗を減らす設計”という観点でおすすめをまとめます。

  • 小規模(個人開発/ページ数が少ない/要件変化が速い)

    最小限のルート設計で、変更コストを低く保つ構成が向きます。最初から厳密な分割や強い規約を作り込みすぎると、速度が落ちやすいためです。

    • ルート定義は「読みやすさ優先」でフラット寄りにし、ネストは必要最低限にする

    • 画面単位で完結する責務(表示・入力・遷移)を優先し、共通化は“重複が痛くなってから”行う

    • テストは重要導線(ログイン、購入、問い合わせ等)に絞り、ルーティング周りの退行を早く検知できるようにする

  • 中規模(チーム開発/機能が増えていくSaaS/画面とデータが密接)

    機能追加と改修が並行するため、「ルート境界=責務境界」を意識したモジュール化が効果的です。react router v7の運用では、ルーティング変更が影響範囲を広げやすいので、境界を明確にするほどスケールします。

    • 機能(ドメイン)単位でルート群を束ね、ディレクトリ構造・命名規約を固定する

    • レイアウトや共通UIは“流用単位”で分け、共通化しすぎて依存が逆流しないようにする

    • 権限・認可・未ログイン導線など、分岐の多いルートほど設計を先に固める(後からの修正コストが高い)

    • ルート追加時のレビュー観点(URL設計、命名、共通レイアウト影響、遷移の整合)をチェック項目化する

  • 大規模(複数チーム/長期運用/複雑な権限や多言語、段階的リリース)

    人と機能が増えるほど、react router v7自体の使い方というより「変更を安全に入れるためのガードレール」が要になります。特にルートは全機能の“背骨”なので、統制の仕組みを作るのが最短ルートです。

    • ドメイン境界を明確化し、ルートの所有(オーナー)をチーム単位で割り当てる

    • URL設計のガイドライン(命名規則、階層、パラメータの扱い、互換性方針)を文書化する

    • 段階的リリース(A/B、機能フラグ)を前提に、ルートの切り替えパターンを標準化する

    • 型・Lint・テストで“ルート変更の破壊的影響”を機械的に検知する(レビュー依存にしない)

要するに、小規模は「速さと単純さ」、中規模は「ルート境界での責務分割」、大規模は「統制と安全な変更」の優先順位で組み立てると、react router v7の運用が破綻しにくくなります。

学習・移行を進めるためのチェックリスト

react router v7の学習や移行は、調べながら場当たりで進めるよりも、チェックリストで“確認の順番”を固定したほうが確実です。ここでは「理解→設計→実装→検証」の流れで、抜けやすいポイントをまとめます。

  • 1) 目的と範囲を確定する

    • v7にする目的を言語化する(保守性、将来の拡張、運用課題の解消など)

    • 移行範囲を決める(全画面一括か、機能単位の段階導入か)

    • 互換性のリスクが高いルート(認可、ログイン、決済等)を先に洗い出す

  • 2) ルート設計の“基準”を先に作る

    • URLの命名規約(複数形・単数形、階層の深さ、動詞を避ける等)を統一する

    • パラメータ(動的セグメント)のルールを決める(可読性、変更耐性、ログ分析のしやすさ)

    • 共通レイアウトの分割単位を決める(どこまでを共通にし、どこからを機能側に持つか)

  • 3) 実装前に“品質ゲート”を用意する

    • ルート変更が入ったら必ず確認する観点をテンプレ化する(レビュー用チェック項目)

    • ルーティングに関わる最低限の自動テスト(主要導線の遷移、未ログイン時の挙動など)を決める

    • 本番相当の環境差(ベースパス、配信構成、環境変数)を想定した確認手順を用意する

  • 4) 移行は“壊れやすい順”に段階化する

    • 共通レイアウト配下の画面群は影響が広いので、最初に移す場合は小さく切って検証する

    • 権限やガードが絡むルートは、仕様(期待する遷移)を文章で固定してから変更する

    • リダイレクト・404・エラーハンドリングなど境界ケースを、実装と同時に確認する

  • 5) 完了条件を明確にして“移行しっぱなし”を防ぐ

    • 移行完了の定義を決める(旧実装の削除、ルート定義の統一、動作確認の証跡など)

    • ドキュメント(ルート構造、命名規約、追加手順)を更新して、次の開発者が迷わない状態にする

    • 運用で問題が起きたときの切り分け手順(ログ、再現条件、影響範囲の調べ方)を残す

このチェックリストをベースに進めると、react router v7の導入・移行を「手戻りが少なく」「チームで再現できる手順」として固めやすくなります。次に読むべきポイントは、あなたの状況に合わせて「規模別のアーキテクチャ」に立ち返り、ルート設計基準と品質ゲートを先に決めてから実装へ進むことです。